*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
さっそくぱたぱたと馬場のほうへ向かう。




たまたま自分の馬の手入れをしていた藤波(フジナミ)と楪葉(ユヅリハ)が振り返った。





「あっ、汀さん!」





楪葉が馬の背中を刷毛で撫でていた手をとめ、汀を迎えた。





「どうしたの?」




「あのね、馬に乗らせてほしいのよ!」




「えぇっ!?」





楪葉は困ったように、汀の背後に来た灯を見た。





藤波も手をとめ、成り行きを見守っている。





灯は溜め息をつき、藤波と楪葉に視線を向けた。






「………申し訳ないが、こいつに馬を貸してやってくれないか。


俺の馬がいればそいつを貸すんだが、俺はあいにく馬を持っていないからな」






灯は馬よりも早く身軽に走れるため、馬を保有していないのだ。






藤波と楪葉は顔を見合わせた。






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