*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「私が言いたかったのは、あなたがここまでついてきてくれたことよ。



今日は疲れていたでしょうに、最後まで付き合ってくれて、ありがとう」






「…………あぁ」







灯は無愛想に答えた。




汀はふふふと笑って、また桜を見上げる。






「………今日は、お母さまとゆっくりお話ができて、良かったわ」





「そうだな………」





「…………やっぱり私のことは、少しも思い出してくださらなかったけど」







汀の声は、何ともないような声だった。




だが灯は、その心のうちに思いを馳せて、じっとしていられなくなる。







気がついた時には、無意識のうちに、汀の頭を抱えて自分の胸に引き寄せていた。







「…………俺が、お前の母親の分まで、お前のことを覚えておいてやる」







「……………え?」







唐突な言葉に、汀は目を瞠った。





思わず灯の顔を見上げようとしたが、灯は腕にぐっと力を込め、汀の顔を固定した。






< 333 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop