箱入り結婚のススメ

「好きな人と生涯を共にする。それは、そんなにいけないことですか?」


父の目が泳ぐ。
母のひと言は、どんな言葉より効いたようだ。


「室賀さんは、舞が私達の子でよかったと、何度も言ってくださったじゃないですか」


私も泣かずにはいられなかった。

秀明さんは、こんなに頑固な父のことだって一度も否定しなかった。
だから、溜息をつきながらも父を嫌いにならずにすんだ。

「舞」

「はい」


突然父が私の名を口にする。


「お前は本当に幸せなのか?」


「はい。秀明さんの隣はとても幸せです。
それに……お父様とお母様に育てていただいて、本当に感謝しています」


窮屈な思いはしたけど、それ以上の幸せがこの家には詰まっている。



< 317 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop