箱入り結婚のススメ

「舞さん、秀明が忙しすぎて寂しくなったら、いつでも遊びに来なさい」


私の斜め向かいに座るお父様が、私に優しく語りかける。


「はい」

「ここはもう舞さんの家。
家族になってくれて、ありがとう。これからも秀明をよろしく」


お父様が照れくさそうにそう言ってくれたとき、ここに来てからのたくさんのうれしい言葉を思い出して、涙を我慢できなくなった。


「すみません。私、幸せすぎて……」

「ホント、かわいいお嫁さんね。トロ、食べときなさいよ?」


クスッと笑ったお母様は、私の皿にトロを乗せてくれた。


秀明さんと出会えて、本当によかった。

ほんの少し前まで、結婚どころか恋の味も知らなかったというのに、今の状態が信じられない。
恋をして、よかった。

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