箱入り結婚のススメ

「でも、そんなにひどくはありませんから、大丈夫です。
園児がケガをしないで済んだのですから、このくらいは平気です」


太知君がケガをしなかったのは、本当に良かった。
私の運動神経があまり良くないせいで、ヒビなんて事態になってしまったけど、少しは先生らしいことができたのかもしれないと、思っていたくらいだ。


「速水さんって……」

「はい?」

「幼稚園の先生に向いてますね」

「そう、ですか?」

「うん。だって園児のことを本当に愛してる。
子供ってそういうことに敏感だから、きっと速水さんのことを大好きな気がするよ」


うれしかった。
両親の反対を押し切って幼稚園の先生になったけど、本当は全然向いていないんじゃないかって思っていたから。


先輩の先生のように、子供たちを上手く指導できなくて落ち込むことも多かったし、同期の麻子のように要領もよくはなかった。


麻子は落ち込む私を見て、「育ってきた環境の違いだよ。私はガツガツしてないと負けちゃうようなところで揉まれてきたから、いつの間にか身についただけ」なんて笑っていたけど。

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