初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
「ねえ、ママ」
「ん? なあに?」
「今日、出かけてきてもいい?」
ママはわたしの言葉に、目を見開いた。
それくらい、休日に出かけるなんて、珍しいこと。
「叶太(かなた)くんの家に……とは違うわよね」
「うん」
もちろん、カナの家に遊びに行くくらいなら、わざわざ、許可を取ったりしない。
「図書館?」
「ううん」
ごくごくたまに足を運ぶのは市立図書館。
でも、図書館に行くのだって、別にママに、行っていいかなんて、聞いたりしない。
「あのね、T市のデパートでハンドクラフト展をしているの」
「……うん」
ママの視線が宙をさまよった。
きっと、ママはハンドクラフトの意味が理解できずに、いる。
頭良いのに、お料理やお裁縫はさっぱりのママ。
クスリと笑うと、ママは肩をすくめた。
ハンドクラフトでイメージはできなくても、わたしの趣味が手芸だと知っているママは、何となくは想像が付くみたい。
「それで、見に行きたいの」
「いいわよ。車、空いてるから使いなさい」
「え? 電車で行くのよ」
ママの動きが一瞬、止まった。
「電車!?」
「だって、会場、駅前のデパートだもの」
ママが困ったように、わたしの目を見た。