バカップルに花束を。
バカップルに花束を。
新春...

就職後、1人暮らしをしているわたしのマンションに麻衣ちゃんが来ていた。

元々化粧が苦手な麻衣ちゃんは、幼稚園児相手の仕事で、顔が子どもに近づくこともあるから、ほとんど化粧をしていない。

日焼け止めとBBクリームと、色つきリップくらい。

高校生の方がもっと化粧してるし。

結婚が決まったし、若奥様としてスーパーの店頭に出ることもあるから、お化粧できるようになりたい!と、わたしに教えを請うて来たんだ。


しかしながら、麻衣ちゃんはふんわりとした丸顔で

色白の肌はシミひとつないし、血色がよくてほんのりピンクの頬っぺたは、うっすらとチークを塗ったみたい。

パッチリと大きな目には、くっきりとした二重まぶた。

目を縁取るのは、マスカラもツケマもエクステもしてないのに、黒々・ビッシリ・自然にクルンとした長いまつ毛。

色が白いから、唇もツヤツヤした濃いピンク。

小さい頃はキューピーみたいな子だった。そのまま大人になったような感じ。

化粧なんか必要ないですよね。


まあ、お店に出るだけならいつもの手入れでも十分だろうけど、結婚式と披露宴では映えないだろうな。

一応これでも化粧品メーカーに勤めているわたしが、テクニックを伝授することになった(事務職員だけど)


麻衣ちゃんが好きな色や、わたしが麻衣ちゃんに似合いそうな色を選んでメイクを始めた。

「真咲ちゃんとこういうことするの、初めてだね」

「そういえば、そうかも」

化粧をするようになった頃には、別々の道を歩き出してたからね。

2人でキャイキャイ騒ぎながら出来上がった麻衣ちゃんのメイクは...


と、その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。

「いらっしゃい、将くん」

「お邪魔〜、真咲ちゃん。麻衣、どんな感じ?」

「う...ん。百聞は一見に如かず?」

「何それ?意味深〜」

何と答えてよいのか分からずに口ごもるわたしと、穏やかなキラキラ笑顔の将くんは、麻衣ちゃんがいるリビングに入り...



「...」

将くんは絶句した。


そうだよね、そうだよね。そういう反応になっちゃうよね。


童顔とはいえ、はっきりした顔立ちで色白の麻衣ちゃん。思った以上に発色が良くなりすぎて、

いわゆる厚化粧になってしまった。


「真咲ちゃん、何てことしてんの!?」

わたしが怒られるんですか。

「将くん、わたし変かな?」

「いつもの麻衣がいい」

お互いの目を見つめ合って...あ〜ぁ、バカップルモードが入っちゃったよ。


「口紅、濃すぎ」

そう言いながら将くんは麻衣ちゃんの唇に親指を添えて、そのまま自分の唇を重ねてしまった。

口紅を取り除くようにキスを続けている。

「ん...んん〜」

麻衣ちゃんが苦しそうに、艶かしい吐息を漏らし始めた。

オイオイ、ひとん家で本気にならないでよ!?


「ちょっと、その辺で止めなさいよ」

唇を離した麻衣ちゃんと将くんは、2人の世界に入り込んで、わたしの声なんか聞いちゃいない。

「もう将くんったら、口紅付いちゃったよ」

麻衣ちゃんは膝を立てて将くんの首に腕を回して、今度は自分から唇を寄せた。

唇を開き、ピンクの舌をちょこんと出して、将くんの唇に移った口紅を舐め取りだした。

エ、エロいです。

将くんの腕は、麻衣ちゃんの腰に回ってるし。

幼なじみの2人が作り出すエロい空気と水音を破ったのは、当然わたし。


「コラーッ、バカップル!ヤるんだったら自分ちでやれーっ!」


唇を離した麻衣ちゃんが、わたしを見てニヤリと笑った。

「真咲ちゃん、ヤキモチ?かわいい〜!」

突然麻衣ちゃんはわたしに飛びついて来て、その唇をわたしの頬に押し付けた。

「何やってんだ、お前たち」

そう言いながら将くんは、わたしに抱きついている麻衣ちゃんの上から、さらに抱きついて、反対の頬に唇を押し付けた。


「もうっ!」

仕返しに麻衣ちゃんの唇を奪って、将くんにも、さすがに唇にはできないから頬にキスをした。

「真咲ちゃん、愛してる〜」

「麻衣の次に好きだよ、真咲ちゃん」

「重いー、止めて〜」

麻衣ちゃんと将くんに押し倒されて、わたしは床にゴロンと転がされていた。

2人はわたしの顔中にキスを降らせてくる。

もうヤケクソだ!わたしは腕を伸ばして、2人の首にギュッと抱きついた。


20代も半ばになった大人3人は、大型犬がじゃれあってるみたいだ。こんな時間は嫌いじゃない。

麻衣ちゃんと将くんはバカップルだけど、わたしも相当バカだ。


どんなことがあっても、2人とはいつまでも一緒にいるだろう。



4月の始めの土曜日。

麻衣ちゃんと将くんの結婚式と披露宴。

麻衣ちゃんが希望して、プランナーさんが必死になって探し出した、桜がある場所でのガーデンウェディング。

運良く桜は満開、天気も良好。


プロのメイクが施された麻衣ちゃんは、オンナのわたしでも食べたくなるほど、輝いていた。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

100%初恋

総文字数/6,837

恋愛(純愛)7ページ

表紙を見る
もう1度ラストチャンス

総文字数/7,369

恋愛(その他)3ページ

表紙を見る
焼けぼっくいに火をつけて

総文字数/33,436

恋愛(その他)28ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop