キスしたくなる唇

怜央の部屋

怜央Side
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 逢いたいと思っていた人が目の前にいる。しかもめちゃくちゃ疲れた顔をして。

 駅近くの服屋で頼んでいた服を受け取った帰り、俺は千秋さんを見つけた。

 さっき、千秋さんの唇に良く似たアンジュの唇を見てから無性に逢いたくなっていたから、テンションが上がる。

 千秋さんは行き交う人を呼び止め、話をしている。

 俺は周りを確認してから、千秋さんの元へ足早に近づいた。

 この出会いを無駄にしてはいけないと俺は行動に移し、うまく2人で食事をするところまでこぎつけた。

 先に実家を出たのは千秋さんで、たまにしか会えなくなった。

 俺も去年、一人暮らしを始めた矢先、ファンの子に自宅がバレて引っ越しをするはめになる。

 今のマンションは原宿駅から少し歩くが、頻繁に仕事で使うスタジオは近いし、大学に通うのにも不便はない。

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