闇に響く籠の歌
圭介の言葉の端々からは嫌味しか感じられない。だというのに、水瀬は平然とそんな言葉を口にする。この人、見た目は穏やかだが、絶対に性格が悪い。そんなことを圭介が思っている横で、柏木が思い出したようにポツリと呟いていた。


「それはそうと、今日って23日だったよね。3のつく日じゃないかな?」


彼の言葉に遥が食いつかないはずがない。美味しいカフェオレとケーキに舌鼓を打っていた彼女は、ますます嬉しそうな顔をしてグイッと身を乗り出している。


「柏木さん、その話知ってるんだ。ね、やっぱり、気になるわよね」


フォークを振りまわしながらそう叫ぶ遥の姿。ケーキが飛び散る、といいたい気持ちをぐっとおさえた圭介は、彼女がこれ以上興奮しないように頭をポンポンと叩いていた。


「圭介。何するのよ。圭介のクセに生意気」

「お前が興奮してるからだろう。まったく、柏木さんもですか? これ以上、遥の同類には会いたくなかったんだけどな」


心底嫌そうな顔で圭介がそう呟いている。それを耳にした柏木はクスリと笑うだけ。そして、意味ありげな彼の言葉に今度は川本が飛びついてきていた。


「おい、柏木。3のつく日ってなんだ?」

「川本さん、ご存知ありませんでしたか? このところ、3のつく日に変死体が発見されているじゃないですか。今日のもそうだと思ったんですがね」

「ま、まあな……もっとも、上の連中はそんなこと思ってないがな。今までの件は、酔っ払いが勝手に死んだっていう見解だ。もっとも、今回は刺し傷があるっていうから、どうなるかはわからんがな」

「そうなんですね。じゃあ、今までの分で歌が聞こえていたっていう証言があるのも警察は無視してるんですか?」


その声に川本はバツが悪そうな顔をする。その横で柏木の話を興味深そうに聞いていた遥の顔色が一気に明るくなっていた。それを見た圭介はとことん嫌な予感しかしない。案の定、遥はどこか興奮した調子でいつもの台詞を口にしていた。


「やっぱり、そうなんだ。これってかごめの歌が絡んだ連続殺人じゃないの?」

「遥、落ちつけ。これがそうだと決まったわけじゃないだろう」

「圭介、何、寝ぼけたこと言ってるの。3のつく日に変死体が発見されてその時に歌が聞こえていたっていうんでしょう? もう、これって確定じゃないの」
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