闇に響く籠の歌
川本の言葉に水瀬が呆れたように返事をする。しかし、当の本人は気にする様子もない。それを見ていた柏木は、このまま話を続けた方が早いと判断したようだった。


「ま、川本さんの言ったように両方の意味があるんですが、ここでは妊婦ということにしておいてください」

「どうしてだ?」

「その続きで鶴と亀が滑っているからですよ。つまり、妊婦が転ぶか何かした。このあたりは分かってもらえますか?」


柏木の言葉を完全には納得していないのだろう。それでも、話を進める方が先だ。そう告げたのは長年の刑事としての勘だろうか。川本は話が進められるようにコクリと頷いている。それを見た柏木はゆっくりと話を続けていた。


「で、最後。『後ろの正面誰だ』とありますよね。これって妊婦が突き落とされたっていうことだっていうのがもっぱらの話題ですよ。つまり、この歌は奥さんを殺された男の復讐ってね」

「ほ〜、そんな話題があるのか」


感心したような調子で川本が柏木の言葉を受けている。それに対して、柏木は嫌そうな表情で応えていた。


「川本さん、しらばっくれるのやめましょうよ。たしか、二か月ほど前の13日に妊婦が階段から落ちた事故があったでしょう?」

「そういえばあったな」

「でもそれは事故じゃない。ですよね? たしか、何人か取り調べを受けたってききましたよ」


柏木のその声に川本は何も言おうとはしない。彼は平然とコーヒーを口にするが、横にいる水瀬はそうはいかないようだった。小刻みに手が震えているのか、カップとソーサーがぶつかりカタカタと音がする。そんな彼らに柏木は思いもよらぬ言葉をぶつけていた。


「ついでに、このところの変死体がその時に取り調べを受けたメンバーだ。これが、ネット上では毎日のように囁かれているんですよね」


柏木のこの言葉はメガトン級の爆弾ともとれるものだったろう。彼の言葉に息をのむ圭介と遥。困り果てた様子で顔を見合わせる刑事二人。そんな中、柏木は平然とした顔でコーヒーのサーブを続けているだけだった。


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