仕事しなさい!
「わかりました。もう、関わりません」


背を向けて言う須賀くん。
私は今度こそ終わりになるとわかった。


「たくさんのこと、すみませんでした。
さよなら、倫子さん」


須賀くんは部屋から出ていく。
廊下を歩く、階段を降りる須賀くんの足音を私はじっと聞いていた。

例えば、今、
この部屋を飛び出して、彼の背に追い縋れば、私は幸せになれるかもしれない。

嫌いなんかじゃない。
私だってきみが好きだよ。
そう言えば、彼がどれほど喜ぶだろう。

だけど、できない。
彼に追い縋れるほど、私はプライドを捨てられなかった。
そこまでに自分を惨めにできなかった。

私は天井を仰ぎ、目を閉じた。
ようやく泣ける。

私は顔をおおい、声をあげて泣いた。




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