仕事しなさい!
須賀くんは逆に私の顔を覗き込み、髪の毛を束ねていた黒いゴムをぴっと取った。


「ほら、ほどいた方が可愛い。金曜で仕事終わりに、髪結んでることないでしょ?」


私が馴れない接触に言葉を失っているうちに、彼は私の手をとって歩き出した。


「夕飯、行きましょ?」



連れてこられたのは麻布のフレンチ。
といっても、立ち食いスタイルの気取らないお店。
最近流行ってるらしい。


須賀くんは馴れた様子で奥の二人用テーブルに座を閉め、さくっと注文。


「前に女の子連れてきた時は、『疲れたぁ、座りたい』なんて言われて興醒めしちゃったんですよ。倫子さんはダンスやってるくらいですもんね。足腰強いから大丈夫でしょ」


須賀くんがぺらぺら喋る。


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