俺様常務とシンデレラ

男の人って、一生懸命になにかを堪える姿がいちばんセクシーなんだと思う。

常務の表情がどんどん余裕をなくし、堪えきれない吐息がもれる瞬間、私の胸は一際きつく締め付けられる。


この人は、私だけのもの。

これは、私だけが知ってる常務。


意地悪なところも、無邪気な笑顔も、子どもっぽいところも、無防備な表情は全部。


私だけに、見せていて。


常務は私を揺さぶり、突き上げ、がぶがぶと食べ尽くす。

私はその度に声にならない声を上げ、彼にしがみついて、目の前で弾けるキラキラとした光を何度となく見た。



* * *



私が重たい瞼を開けたとき、部屋のカーテンの隙間からは柔らかな光が差し込んでいた。

気怠い身体は力強い腕に抱きしめられ、ベッドの下には群青色のドレスと、ミッドナイトブルーの燕尾服がだらしなく放られている。


ふと視線を感じて顔を上げると、しっかりと開かれた黒い瞳と目があった。


「うぎゃ!」

「なんだその色気のない反応は」


常務はププッと笑って私をバカにする。

だって……!


「お、起きてたなら声かけてくださいよ! なんでジッと見てるんですか!」


ひーん!

寝顔すごい見られた! 恥ずかしい!
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