俺様常務とシンデレラ
今日は大事な役員会議があるから、緊張でもしているんだろうか。
「いや、特に用事はないけど、どうしてるかなと思って。お前今日、アジュールで打ち合わせだろ?」
「あ、はい、そうです」
今日の常務は大事な役員会議に出席しなくちゃいけないので、私が代わりにアジュールでの打ち合わせに出掛けることになっている。
いよいよ2週間後に迫ったオープニングセレモニーのために、(株)プレジの社長である東堂理久さんと会って、最終確認をするのだ。
役員会議には、葉月さんが常務に付き添って出席する。
「会議が終わったら連絡するから。なんかあったら言えよ」
「は、はあ……。でも、打ち合わせの内容はちゃんと報告書に……」
私は打ち合わせが終わったらすぐに本社に戻ってきて、今日中に報告書を提出するつもりだ。
常務が報告書に目を通すのは会議後になるはずだし、緊急事態でなければ、わざわざ電話確認なんて必要ないはず。
そう思って首を傾げると、常務は私の頭に手を置いて、かなり乱暴になでて髪を乱した。
「ああ! な、なぜ……!」
「ばーか」
常務は、慌てて常務の腕を掴んだ私の手首を掴み返し、軽く引っ張って引き寄せる。