俺様常務とシンデレラ

《……なんかあったのか?》


常務の声が少し低くなり、途端に心配そうな色を濃くする。

甘やかすようなその声に、私は思い切って聞いてみることにした。


「あの、常務はどうして、本当の自分を偽ったりするんですか……?」

《あ?》


私の唐突な質問に、常務は困惑したような声をあげ、少しの間電話は沈黙となる。

どうしよう、なんかドキドキする……。

私はその間、大きく聞こえる自分の心臓の音に耳を傾け、常務の返事をジッと待っていた。


《……偽ってるように、見えるか?》


小さく返ってきた声に、私はびっくりして目を丸くした。


「え! 自覚ないんですか!?」

《いや、そういうわけじゃねえけど……。その、俺としては、別に偽ってるつもりはないと言うか……》


常務は珍しく、聞き取れないような声で言い淀み、私はなんだかますます混乱してしまった。

だけど考えがまとまっていないのは常務も同じのようだったので、しばらく黙って待っていると、常務はゴホンとひとつ咳払いをして、今度はハッキリと話しはじめる。


《俺の親父に、公私を混同するなと、昔から言われていたからかもしれない。しっかり表の顔を使い分けろ、と。まあ葦原の息子ってだけでそこら中に他人の目はあるから、ほとんどの範囲が"表の顔"に当てはまってしまった節はある》
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