俺様常務とシンデレラ
駅前から一直線に続く、多くの飲食店が並ぶ通りから少し外れ、隠れ家のように明かりを灯す『猫丸』。
大通りを逸れて、その小さな明かりが見えたところで、どーんと構えて座っていた店長の飼っている--白くてまるまるとした体格のいい--猫のマルが私を出迎えた。
さっき見えた白くてまるまるとしたものが、このマルなわけはない。
だって私はあの後すぐに電車に乗ってここへ来たんだもん。
5つも先の駅の近くにある『猫丸』まで、猫のマルのほうが先に着くわけないし。
私は自分にそう説明しつつも、やっぱりさっき見たのはこのマルだったような気がしてならない。
私がうーんと首を捻っていると、マルがのそっと立ち上がり、尻尾をぴーんとたててスタスタと店に向かって歩き出した。
「あっ、待ってマル!」
慌てて追いかけると、マルは一瞬振り返って顎をくいっと動かし『ついてきな』と言ってまた足早に駆け出す。
ま、マル……!
いつも店先で寝てるだけだったのに、あんなにはやく走れるんだ!
私はでっぷりとしたマルの意外なほどの俊敏さに驚きながらも、マルのあとを追って、久しぶりに『ラーメン猫丸』の暖簾をくぐった。