俺様常務とシンデレラ



* * *



「か……かっこいい……!」


1分後。

私はさっきの緊張感などすっかり忘れ、目の前に現れた常務にメロメロになって、思わず本音をポロリとこぼしてしまった。


常務は午後から行われるパーティーのために、新郎役の衣装を着ている。


上品な濃紺のタキシードは常務によく似合っていて、襟部分とベストは彼の瞳と同じ色ですごくオシャレ。

胸元には私が持つブーケとお揃いの色の花のブローチがついている。


「お前も……その、よく似合ってる」


かっこいい新郎さまに見惚れてぽかーんと見上げる私を、常務もまた少し惚けたような顔で見ていた。

私をここまでエスコートしてくれた理久さんが、見つめ合う私たちをげんなりした表情で見ている。


「そこは素直にキレイだと言えよ」

「うるさいな、お前と一緒にするなよ。お前いつか絶対、小鞠に嫌われるからな」


ほんの少し照れたように目の下を赤くして視線を逸らす常務に、私の頬は自然に緩んで嬉しさからニヤニヤと笑ってしまう。


常務は、今ではもうすっかり理久さんと打ち解けてしまった。

私がちょっと嫉妬しちゃうくらい、肩の力を抜いているのがわかるんだ。
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