俺様常務とシンデレラ
「じょ、常務……。穴があったら入りたい気分です……」
「なに言ってるの? 佐倉さん、今日はとてもキレイだよ」
もし私が亀なら、縮こまって手も足も首も、甲羅の中に押し込めているところだと思う。
そんな私に、今日も惜しげもなくキラキラ・オーラを振りまくのは、私のボス。
くそう、この人の本性を知ってるだけに、なにを言われても嫌味にしか聞こえないゾ!
私は常務に連れられて、葦原家の別邸とも言える、帝国葦原館の周年記念パーティーに来ていた。
遠目に見た英国式の庭園や、大きなコンサートホール。
数えられないほどたくさんの部屋をもつ宿泊棟もあったし、プールもあった。
こんなに大きくて立派な建物が葦原家の"別邸"だなんて、本邸はどんだけすごいんだと思ったけど、
「本邸は大したことないよ。みんな別邸だからって、なんでもかんでも好きなものをここに詰め込んだんだ」
と、常務は言っていた。
そして地味なグレーのスーツ(普通に仕事着だもん!)でここへ連れて来られた私は、知らないお姉さんたちに着せ替え人形の如くドレスを取っ替え引っ替えに着せられ、常務が迎えに来てくれたことでやっと解放された。