俺様常務とシンデレラ
「はあ……」
王子様はいつだって、容姿も身分も相応しいお姫様を見つけてしまうものだ。
常務だっていつかきっと、彼の望むシンデレラを探し出してしまうだろう。
私はもう何度目かわからないため息をついて、長い廊下の途中にある休憩スペースで少し休むことにした。
半円の形に突き出した休憩スペースには、大きな窓が切り取られていて、葦原館の広大な敷地を窺える。
通路側に背を向けた、ワインレッドの背もたれの高いソファをぐるりと回った。
「ありゃ、先客……?」
大きな背もたれの影に隠れて見えなかったけど、そのソファには随分と脚の長い男性が横たわっていた。
その男の人は、パーティーの出席者としてはシンプルなチャコールグレーのスーツに身を包み、蘇芳色のネクタイを緩めて目を閉じている。
スーツの胸が小さく上下する度に、長いまつ毛が頬に落とした影を揺らす。
本当はすぐにここを離れようと思ったのに、あまりに端整な顔の造りについ引き寄せられてしまった。
私は腰を屈め、その寝顔をそっと覗き込む。
薄い肉付の頬に、シャープな顎。
まっすぐな鼻筋と、閉じた目の下の微かなクマが冷たい印象を与える。