俺様常務とシンデレラ
「うーん、なんか、どっかで見たことあるような……。ないような……」
最近どこかで見た気がする。
この厳しい雰囲気と、綺麗すぎて冷たく感じる顔立ち……。
あ、わかった。
この髪型が余計なんだ。
眠る男性の黒髪は短く刈り上げられ、トップだけにふさふさとボリュームを持たせた、なかなかオシャレなツーブロックだった。
左手をかざして彼の黒髪を隠し、目を眇めてみる。
その目鼻立ちにのみ焦点を合わせて、もう少しで思い出せそうというところで、男性が突然パチリと目を開いた。
「ぅわっ! ……きゃ!」
「ばか!」
驚いて勢い良く仰け反り、慣れないピンヒールによろけてそのまま尻もちを付きそうになった私の左腕を、力強い手のひらが掴む。
その腕をぐんっと引っ張られ、反対の腕で腰を支えられて、私はなんとか転ばずに済んだ。
「あっ、わ、す、すみません!」
私が慌てて態勢を整えて頭を下げると、男性はサッと腕を離した。
「いや、別に。ここ、座りたかった?」
もぞもぞと身を起こした彼は、そう言いながら私のためにスペースを空けてくれる。