胡蝶蘭


いつもの毎日と変わらないはずだった、
ここまでは。


梨花という源氏名をもつお得意さんの
キャバ嬢さんの髪をいつも通り
くるくると巻いていく。


「それでさぁー、今日は西園寺さんが
巡回で来るかもしれないのよ。」


今日はいつも以上に気合入れてね!
なんていう梨花さんになにかあるのですか
と、たずねれば
あーなるほど。となっとくする答えが返ってきた。


西園寺ーーーなんとかさん。
下の名前は一般市民のあたしは知らない。

だけどここにくるキャバ嬢さんや
ホステスさんは時折その名前を口にする。


抱いてもらった
だったり、
指名してもらった
だったり、様々だ。

そして最後に皆口にする

「やっぱりいい男だったわ。」
と。


会ったこともないその人を、ホステスさん達の
言葉だけで想像するのは微妙な気がしたが、
それでも情報は山ほど入ってくる。


西園寺さん。

下の名前すらわからない彼だけど
なんだか最近気になる名前だった。
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