LAST SMILE ~声を聞かせてよ~



あれから毎日、
成瀬は宗祐の部屋を訪れた。


それも、決まって
宗祐が寝ている時に。


最近宗祐はよく寝ている。


いや、寝ることはいいんだけど、
それにしても頻繁に寝ているような気がする。


今日も宗祐の病室へ向かうと、
ちょうど向こうの廊下から成瀬が歩いてきた。


手にはクロッカスの花がある。


成瀬は、宗祐の言う通り
この病院に入院している、
白血病の女の子だった。



歳は19歳。


それくらいしか
分からなかったけど、謎すぎる。


どうして成瀬は、
宗祐に固執するんだろうか。


「おう、成瀬。具合はどうだ?」


「……別に」



成瀬に話しかけるといつも、
素っ気ない返事が返ってくる。


相変わらず今日も虚ろな目をしている。


変わったことといえば、
あの黒く長い髪がなくなり、


代わりに帽子を
かぶっていることくらいだった。


髪がなくなっても、彼女は美しい。


「それ、クロッカス?
 なんで毎日持ってくんだ?
 宗祐と知り合い?」


「……この子は、同志よ」


「同志?」


「あなたには分からないだろうけど」


成瀬はそう言うと
クロッカスの花を窓辺の花瓶に生けた。


白い花は日の光にあてられて
キラキラと輝いている。


成瀬はその花をじっと見つめて、
それからふふっと笑った。






「もう少しよ」


「何が?」


「…………」





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