LAST SMILE ~声を聞かせてよ~



宗祐と二人、沈黙が走る。


俺は丸椅子に腰かけて、深呼吸した。


「怖い、のか?」


「えっ……」


俺の問いかけに、
宗祐は反応して声をあげた。


「手術。怖いだろう」


「べ、別に怖くなんか……」


「強がるなよ。子どもだって
 大人だって、誰だって、
 怖いもんだよ」


「…………」


宗祐は押し黙ったまま、
目を見開いて俺を見つめた。


「怖いと思うのは、恥ずかしいことじゃない。
 だからもっと素直になれ」


「なんだよ、それ……」


「本当は不安でしかたないんだろ?
 怖いんだろ?俺なんかが執刀医でさ、
 だから嫌なんだろ?」


「……そういうわけじゃ」


「正直に言えよ」


俺が短くそう言うと、宗祐は俯いた。


しばらく沈黙が続いて、そうやく口を開いた。






「……怖い、よ」





宗祐は小さな声でそう言った。


そうだよな。


怖いよな。


俺だったら考えられない。


死と隣り合わせの状況なんて
想像もつかないことだ。


「やっと素直になったな。お前」


「………笑えよ。どうせ俺は弱いんだ」


「素直になったお前に一つ教えてやる」


「なんだよ……」




「時には泣くことも必要だ」


「は?」





「弱くていいんだ。その弱さは
 お前の強さなんだから」





俺の言葉を、
きょとんとした顔で聞いていた。




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