LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
桐生さんはふと俺にそう訊ねた。
俺が、医者を目指す理由?
そんなの……
―僕も、お医者さんになりたい!―
「い、医者って、
結構儲かるじゃないすか!?それだけです」
一気にそう言うと、
桐生さんはびっくりしたように俺を見た。
やべぇ。
ふざけんなって怒鳴られる・・・!?
また説教かな。
だって、
そう言うしかなかったし、しょうがねぇじゃん。
「そう。立派ね」
「え?」
何?
何で?
金目当てで目指したやつが、なんで“立派”?
意味わかんねぇ。
なんで笑ってんだよ。
今までこんな理由言ったら、
“医者なめんな”とか
“ふざけんな”って
怒鳴られてきたのに、
なんでこの人はこんなふうに……。
「きっと、神崎医師は
今まですごく努力をしてきたんですね」
また……?
なんで……。
なんで……。
「あの、なんで俺のこと……
“医師”って呼ぶんすか?」
「え?」
「だって、その、俺……研修医なのに……」
悔しい。
自分が研修医だって、
口にするのがこんなに悔しいなんて思わなかった。
俺、まだ医者じゃねぇんだな。
ただの、研修医なんだよな……。
唇を噛みしめて目を逸らすと、
桐生さんは静かに口を開いた。
「神崎医師は、神崎医師ですよ」
「えっ?」