風を切る君


動揺している私をおいて、
一哉は自己紹介をした。

「赤城一哉です。よろしく」

軽くお辞儀したあとに
彼は顔をあげた。
そして、私は彼と
目があってしまった。
心臓がドクンとはねあがり、
目をそらしたいのにそらせなかった。

「すず…は…?」


私をみて、はっときづいた
一哉。

「どうして?…一哉…」

どうして、あなたがいるの?
だってあなたは…、
私を置いて、消えたのに。

「知り合いなのか?間宮」

ゴリ先生に、声をかけられ
停止していた私の体がやっと
機能した。

「いや、あの…。」

「どうした?」

「彼は…私の…幼なじみです…」

「へー!!すげー!」

「こんな偶然ってあるんだねー!」

私の動揺などをさしおいて、
みんなはそんな奇跡のような
この状況にテンションが
あがっているようだった。
一人を除いて。

「間宮?」

「な、なに?隼くん」

「お前あいつと何あったのか?」

「…」

「なあ…間宮?」

沈黙する私に彼は
心配そうに声をかけてくれたのに
喉が締め付けられて
上手く声がでない。
そんなとき
頑張って絞り出した言葉が

「大丈夫だよ…」

強がってしまった。
全然大丈夫なんかじゃないのに。
どうして?
なんでここにきたの…?一哉…。

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