運命の二人~白と黒の物語~
城の中でも街中と同様に、皆が祝杯をあげていた。


マーサとバルゴは皆から少し離れたテラスで祝杯をあげていた。


「ついに御二人の気持ちが通じあったのね。」


マーサは二人がいるはずの部屋の方に目をやり涙ぐんだ。


「お前は。まだ泣く気か。」


先程から同じ調子でマーサが泣くのでバルゴはいささかうんざりしてきていた。


「だって。…私には本当に長い年月だったから。」


鼻をすするマーサにバルゴはぶっきらぼうに腕を回した。


バルゴはリリー・ルゥ嬢が失踪して、一番責任を問われたのは彼女だった事を思い出した。


「そうだな。私にも長かったよ。
やっと殿下を“陛下”とお呼びする事が出来る。」

バルゴは目を閉じた。


今日までの様々な出来事と共に、感情が怒濤のように心を駆け抜けていった。


勿論、彼には納得のいかないこともたくさんある。


でもいいじゃないか。


月を見つめて思った。


あの月が証明している。皆が幸せなのだ。




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