色のない世界。【上】
私の隣には悠汰がいる。
悠汰がいれば大丈夫、そんな気がするの。
「…そういえばどこに行ってたの?
さっき部屋に行ってもいなかったから……」
「あ、あぁ……」
悠汰を真っ直ぐ見つめれば、悠汰は何だか言いにくそうに私から視線を外す。
言いにくいことなのだろうか。
もしそうなら聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない。
「…そう………」
「お前の姉に涼音と会いに行ってた。
……美桜が黒女なのに、あいつが黒髪なのが気になって…」
話を変えようとしたら悠汰が小声で答えてくれた。
絵里香姉様のところに?
黒女のことを聞いたということは、絵里香姉様の事情を知ったということ。
絵里香姉様が"元黒女"であるということを。
眉間にシワを寄せて気まずそうに見つめる悠汰に、苦笑いをしてそれから外を眺める。
「絵里香姉様はご自分のこと、めったに他人には話さないのよ。
話してくれたのは、きっと悠汰を信じてるからだと思う。
だからそんな顔しないで?私は大丈夫だから」
絵里香姉様は誰よりも口が硬い。
でも黒女の導のことや自分のことを話したのは、私達を鷹沢組の皆さんを信頼してるから。