精霊の謳姫


はぁ、とため息を一つこぼし、

落ち着け、と自分に言い聞かせる。



「ノヴァ…?」



きっと、心配そうな表情を浮かべているのだろう自らの主に。

熱のひかない顔を見せるのは、
なんとなく嫌だった。



「本っ当…!
大嫌いだよ、リディアなんて!」



トテトテと、
付いてこようとするリディアに追い付かれないように。

いつものように悪態をついて、
早足で歩く。




大嫌いだよ、リディアなんて。

無神経で単純で、

頑固で負けず嫌いで。


そんなだから、気づかないんだ。



「待って…!
待ってよノヴァ!」




誰にもやらない。
例え、全てを敵に回したって。



君は、きっと、

まだ知らない…___。


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