精霊の謳姫


ミロスの王族には一人につき一人、
専属の騎士がつくことがしきたりである。


当然、リディアにも前任の騎士がいたのだが、ある日突然いなくなってしまったのだ。



前任がいなくなり、しばらく騎士のいない生活を送っていても大して問題視されなかったことにはやはり、
特別優秀な二人の魔導師が側に付いていたことが理由だろう。


だが、その生活も今日で終わりを告げ、
これからは新しい騎士と二人の魔導師
と共に暮らしていくことになる。



「どんな人かしら…。」


「そうだね、まぁ…
そこまで構える必要はないと思うけど?」


期待や不安が込められたリディアの一言に、隣で手を取るノヴァが小馬鹿にするでもなく、淡々と答えた。



「ノヴァは知っているの?」



意味あり気な彼の言葉に思わず顔を覗き込むようにして尋ねれば、



「あぁ…知ってるよ?

僕も、サリーもね。」



ふっと魅惑的に微笑む彼と目が合ってしまい、何故だか恥ずかしくなって…


リディアは慌てて前に向き直った。


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