エターナル・フロンティア~前編~
(……このようなものか)
研究所で表面上のことを学んでいても、いい結果が得られることはない。しかし、深く追求はしない。何よりこれ以上、会話を続けているつもりはなかった。ユアンは、多くの仕事を抱えている。それに途中で途切れてしまった携帯電話の内容、あの続きの話もしたかった。
その時、タイミングを見計らったかのように携帯電話が鳴る。相手は、例の人物――そう、イリアが覗き見をした時に話していた相手であった。偶然すぎる電話に、ユアンは苦笑する。
「ラドック博士、電話が……」
「わかっている。では僕は、これで失礼するけどいいかな? 何かがあったら、電話してほしい」
「は、はい」
「失礼」
言葉と共に窓を閉め、車を出発する。それを暫く見ていたイリアは、車が角を曲がると同時に自宅へと足を進めた。
一方ユアンは、角を曲がったと同時に車を停車させる。
そして、鳴り続けている携帯電話のボタンを押す。その瞬間、不機嫌な声が彼の耳に届いた。
「……怒らないで下さい」
『怒っていない』
「少々、問題がありました」
『君は、問題が多いな』
「褒め言葉として、取っておきましょう」
食えないユアンの言葉に相手は溜息を付くが、相手も負けてはいない。それに、電話したのには理由があった。そう、ユアンが行っている研究内容について尋ねないといけなかったからだ。簡略的に、それについて説明していく。すると何か面白いことがあったのか、ユアンは大笑いをした。
「それは、貴方の考えですか?」
『何?』
「過去に、同じことを言っていた人物がいまして……その人物と同一でしたら、謝りますが」
『どうでもいい内容だ』
焦った口調を続ける相手の反応に、ユアンは図星と察する。この話からそのように伝えてきた人物が、過去に文句を言ってきた人物と同一と判断する。いつも口煩く言い、常に高い結果を求める者達。科学者の気持ちを理解しておらず、自分の名声の道具としか見ていない。