エターナル・フロンティア~前編~

 イリアに、現在の状況を説明した所で理解してはくれない。いや、理解してはいけない生活だ。何より薬漬けの毎日のソラと、生活スタイルが違う。逆に「理解している」と言ったら嘘になってしまい、それに知ったら知ったで、どのような反応を示すのか手に取るようにわかる。

「座っていていいか」

「辛いのなら」

「すまない」

「ソラが、謝ることじゃないわ」

「いや、悪いよ」

 ソラは一言、そう発した。そして項垂れると、イリアに気付かれないように短く息を吐いた別に、億劫というわけではない。現に足の調子が良かったら、イリアに進んで作り方を教えていた。不自由な足は精神的な落ち込みを誘発するらしく、先程から気力が湧かない。

「仕方ない」

「ソラ?」

「君の頼みだ」

 それ以上の言葉は、続けられなかった。一方イリアは、久し振りに「君」と呼ばれ、動揺してしまう。普段、互いに名前で呼び合っているが、今回は微妙に何かが違った。無論、それは漂う雰囲気。それはソラとイリアが互いにどのような感情を抱いているのか、証明していた。

「……ソラ」

「何?」

「本当に、いいの?」

「何を今更――」

 イリアは、ソラに菓子を教えて欲しいと頼みに来た。それを今更、いいか悪いか尋ねる問題ではない。それに彼自身、内心「イリアの為に――」という感情が、心の中に存在していた。しかし、今日は普段通りに装う。そして「用事」という言葉を残し、イリアの前から立ち去る。

「ソラ?」

「だから、用事」

「平気?」

「心配しなくていいよ」

 何度も必死に訴えてくるイリアに、ソラは苦笑を浮かべつつそのように言う。それでもイリアの心配は続くらしく、オロオロと周囲に視線を走らせていた。だが後を追うわけにはいかないので、ソラが奥の部屋から戻ってくるのを静かに待つ。その間も、大丈夫かと心配し続けた。
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