エターナル・フロンティア~前編~

「お前が、俺の地位を……」

「それはない」

 ギリギリの精神状態にあるジェイクを更に追い詰めるかのように、淡々とした声音を発する。

 ユアンは、ジェイクが就いている地位を望んでいるわけではない。今の地位に満足しており、高い地位に就いた時のリスクを心得ている。何より、現在の地位の方が好きに動ける。

 ユアンは人差し指で眼鏡を抑え正しい位置に戻しつつ、このような意味のないやり取りをそろそろ止めないかと提案する。ユアンはジェイクが発する言葉が耳障りで、同じ空気を吸うのも苦痛だった。

 今まで自分より地位が高い――という理由で、付き合ってあげていた。しかし、今日で最後。

「お別れだ」

「何?」

「本当に、貴方は無能だ」

 言葉と共に白衣の裏側から取り出したのは、一丁の古めかしい銃。手入れと管理が悪いのか、所々に傷が目立つ。銃をジェイクに向けると、椅子に座り大人しくするように命令を出す。

「面白い物でしょ? これは、鉛の弾丸を撃ち出して相手を殺す。本当に、昔の人がいい物を造る。これを購入した時、まさかこのような形で使うとは……まあ、それはどうでもいいこと。それより鉛の弾丸が貴方の頭を貫通した時、どのような表情を僕に見せてくれるか」

「や、止めてくれ……」

 ジェイクは、鉛の弾丸を撃ち出す銃の知識を多少持っている。現在、ユアンが持つ銃は生産されていない。手に入れるには独特のルートを使用しなければならず、何より数が少ない。

 広い交友関係を利用して手に入れた、というのが正しいところか。いや、それ以上にジェイクは殺傷能力を恐れた。

 これは残っている資料を読んで得た知識なのでハッキリとしていないが、鉛の弾丸で生身の肉体が撃ち抜かれた場合、下手すれば肉体の一部が欠損してしまう。また、大量に血が噴出す。

 今、銃口は額に向けられている。このままトリガーが引かれ鉛の銃弾が銃口から飛び出したら、脳味噌を貫通する。これでは、即死は免れない。

 ジェイクは一連の流れを想像した瞬間、か細い悲鳴を上げ失禁してしまう。彼の情けない姿にユアンは鼻で笑うと、このような男に今まで逆らえなかったのかと苛立ちが蓄積する。その瞬間、ユアンはトリガーを引いた。
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