地味子と王子様
あたしはそのヘアゴムに手を伸ばす。




ひょいっ






うまい具合にかわされてしまった…



前言撤回。


優しい人でもなんでもない…



……なんなの!



この人、本当意味わかんない。



「カエシテクダサイ」



もう棒読み。



こんなやつにお願いしたくない。



「じゃあ返すから質問に答えろ」



命令形ですか。



そのくらいだったらいいか。



素顔がバレるよりはましだよね。



「早く済ませて下さい」



「なんでそんな格好してんの?」



え…。



そう言われましても…



まぁいいや…

ヘアゴムのためと思って。



「…だって、何事もなく平凡に生活できそうじゃないですか」



ガッシャーンッ!



どこかの芸人さんがやってるみたいに、その男は床にずっこけた。
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