名前も知らない君を

周りを見渡してみると
掴んでいるポールのすぐそばの
座席の男性と目があった。



恥ずかしさから、顔が熱くなるのを自分でも感じている。

「すみません。」
と、苦笑いで会釈する。



「大丈夫?席譲るよ?」
最初こそ驚いた顔をしていた男性だったが、すぐに笑顔でこう言ってくれた。


「いえ!大丈夫です!もうすぐ降りるので!」
恥ずかしさもあったが、
実際に寝ている間に3区間前になっていた。



「そっか。変わりたくなったらいつでも言ってね。」
先ほどの優しい笑顔を向ける。

それに、ありがとうございます、とお礼を言い、目的地を待つ。

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