巡り合いの中で

 最終的には、自分で何とかしないといけない。

 それほど、完治が難しい。

 しかし、悲観ばかりではない。

 やっと、あのセネリオが「恋煩い」をしたのだ。

 ただ、恋愛経験がないからこそ、人一倍悩み苦しむ。

 それだけ、セネリオにとってアリエルの存在は大きい。

 暫く考え込んでいると、セネリオはアリエルも関わる重大なことを思い出す。

 セネリオは間の抜けた声音を発すると、父親の顔に視線を合わせ「言うのを忘れていた」と、口にする。

「どうした?」

「今度、旅行に行こうと思っている」

「一人か?」

「一人で行ったら、周囲が騒ぐ」

「わかっているのなら、それでいい。で、一緒に行くのはライアスか? 彼と共に行くのなら、安心だ」

「勿論ライアスも一緒だけど、アリエルも連れて行く。それと、ライアスも彼女も一緒だよ」

「あの者は、彼女がいたのか」

「いるよ。ライアスの話では、彼女の方から告白したらしい。で、アリエル一人だと可哀想だし」

 だから、ライアスの彼女を連れて行く。

 と、セネリオは父親に話す。

 息子の話に納得するかのように、アゼルは何度か頷く。

 アリエル一人で連れて行っても、異性同士なので何か問題が発生するかもしれない。

 それに彼女はイシュバール以外の世界を知らないので、同性を連れて行くのは心強い。

 また、相手がライアスの彼女なら心配ない。

「いつ、行くんだ」

「一週間後とか……」

「早いな」

「早いかな?」

「予約はどうする? それに、ライアスやその彼女の仕事もどうするんだ。共に行くのなら、勝手に決めるな」

 それは実に、まともな意見であった。

 「何処かへ行きたい」という気持ちが先頭に立ってしまい、肝心な部分を見落としていた。

 そう話す息子にアゼルは表情を緩めると、これによって引きこもりが改善すればいいと考える。

 なにせ、このように自ら出掛けるのは殆どないからだ。


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