巡り合いの中で

『御用ですか?』

 呼び出しと同時にホログラムの画面に投影されたのは、目的の人物であるセリナ。

 セネリオは彼女に「医務室に来て欲しい」と簡略的な頼み方を行うが、長い年月侍女として働いているセリナは詳しい説明を受けなくとも大まかな意味を理解したのだろう、一言「かしこまりました」と、返す。

「頼む」

 それだけを言い残し通信を切ると、セネリオは壁に寄り掛かりながらライアスに話し掛ける。

 もし、これが切っ掛けに戦争に発展したら――

 それに対しライアスは「命令に従う」と、軍人らしい発言をする。

 彼にとって命令は優先しないといけない事柄で、ましてや母星がやられるのを黙って見守れるほど阿呆ではない。

 それに一方的な侵略は、平穏で安定している惑星同士の交流を一変させ不安定なモノにしてしまう。

「いい度胸か?」

「それは?」

「イシュバールの技術力に喧嘩を売るってことさ」

「正直に申しますと、そのように言えます。特に、セネリオ様の腕に挑戦するなんて、無謀と……」

「あと、軍事力だ」

「技術者のお陰です」

「あの者達は、凄い代物を作る」

「それは、セネリオ様も……」

 巨大過ぎる軍事力もそうであるが、セキュリティーの中枢システムを簡単に手掛けることができるセネリオの方が恐ろしいと思えなくもないが、それについてライアスは口にすることはしない。

 現にセネリオが持つ技術力の恩恵を受け、イシュバールは平和にやっている。

 あの少女が来るまでは――

「このことは、長(エドナ)には……」

「勿論、僕から言っておく」

「何と申されるでしょう」

「いい顔はしないね」

「……やはり」

 長(エドナ)と呼ばれているセネリオの父親アゼルは、今回の件を息子に任せると言っていたが、状況が状況なのでアゼル自ら指示を出さないといけない状況にあった。

 侵入を許し、尚且つ仲間がいるかもしれない状況に、果たして何と答えるのか――考えるだけで、セネリオは頭痛を覚える。
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