巡り合いの中で
しかし報告をしなかったら、これはこれで何かを言われてしまう。
結局父親のもとへ行き、状況を話し対策を練らないといけない。
セネリオはライアスに「一緒に行くか?」という尋ねに、ライアスの回答は「勿論」というもので、中途半端に護衛を止めるわけにはいかないと付け加える。
「命令か」
「はい」
「今帰ったら、怒られるか」
そのような会話をしていると、二人の前に呼び出しに応じたセリナがやって来る。
彼女の姿にセネリオは会話を止めると、医務室で検査を受けている「アリエル」という少女を風呂に入れてやって欲しいと頼む。
その瞬間、何か引っ掛かったのかセリナの表情が微かに変化する。
「アリエルとは……」
「例の少女だ」
「そのようなお名前でしたか」
「で、風呂は?」
「クレイドのご命令ですので……」
「……悪い」
本来であったら不審者であるアリエルを風呂に入れる自体拒否されても仕方ないが、セネリオの命令ということでセリナは受け入れる。
彼女が本心で何を思っているかわからないが不快な思いをさせてしまったのだろうと、このようなことを頼んでしまったことを詫びる。
「クレイドが謝ることはありません。このようなことをするのが、私達侍女の役目ですから。ところで、その者は?」
「今は検査中だ」
「では、終わり次第」
「あと、服を用意して欲しい」
「服……ですか」
「今、彼女が着ているのは検査服だ。そして出現時に着ていた服は、場所の特定の為に使っている」
「そういうことでしたら、わかりました」
「風呂が終わったら、連絡して欲しい。これから私は、父さんのもとへ状況の報告に向かう」
セネリオの言葉にセリナは頭を垂れ、アゼルのもとへ向かう二人を見送る。
そして彼等が廊下の角を曲がるのを確認すると医務室へ立ち入り、医師や看護師にセネリオからの命令を伝える。
その命令に一部の者は訝しげな表情を作るも、不潔のままでは感染を起こしてしまうと納得した。