不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「卓巳君っ!」


すでに目を閉じて眠りそうになっていた卓巳君は、ピクンと体を動かして目を開けた。


「ん? なに?」

「……イブの予定ってなんかある?」

「へ? イブ?」

「うん。クリスマスイブ」


卓巳君は視線をキョロキョロと動かすと、バスタブの縁に置いたミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。

気のせいかな? 即答できなくて、まるで言い訳でも探してるみたいに見える。


「イブねぇ……」


そうつぶやくと、ペットボトルをくわえて水を口にした。

その先の答えを聞くのはすごく怖かった。

だけど、勇気をださなきゃ……。


「もし予定がなかったらなんだけど……会えない? ダメかな?」

「ん――……」


卓巳君は私から目をそらして、ほんの少し困ったような表情をしている。

静かなバスルームの中。

この沈黙が永遠に続くんじゃないか。そんな風に感じた時、卓巳君の声が響いた。


「ごめん……」


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