不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「よし」

コートを羽織って、忘れ物がないかチェックする。

部屋の隅に置きっぱなしの紙袋がふと目に入った。

卓巳君へのクリスマスプレゼント。

和美さんのお店で買った手袋だ。

せっかく買ったけど、やっぱりこれは渡せない。

結局、卓巳君へのプレゼントはほかに用意できなかった。

形に残るものをあげても迷惑かもしれない、そんな気持ちもあったから。


マフラーを首に巻いて、時間を確認しようとスマホを手に取ると、着信メールのランプが点灯していた。

メールの相手は沙耶だった。


【がんばれ】


たった一言だったけど、そこには沙耶の想いがたくさん込められているような気がした。


【うん。がんばるね。ありがとう】


返信して、スマホを鞄にしまう。


今日で最後になったとしても、きっと後悔しない。

私の気持ち、全部伝えるから。


大きく息を吐き出して、家を出た。


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