レンタルな関係。

「すごいね、流川直人」


「うん。びっくり」


「で、要くんは?」


「え?」


「要くんからは何かもらったの?」


「あ」


 
……もらってない。

 
っていうか、合宿に行ってるから当然なんだけど。

 
でも、その前に…



「あ、今、合宿中だったんだっけ?」


「う、うん」


「メールとか電話くらいは来たんでしょ?」


 
実は。

 
電話もメールも来ていない。
 


「来てないんだ」


「え? マジで?」


「うん」


 
驚く麻紀。

 
だよね。

 
彼女の誕生日に電話もメールもくれない彼氏って…


 
っていうか、私も…

 
ここ最近のバタバタで、

 
メールも電話もしていないんだ。



「なにそれ? おかしくない?」


「たぶん、忙しいんだよ」


「電話もメールもできないほど忙しいなんてこと、あるわけないじゃん。たかが合宿で」


「そのうち思い出してくれるよ」


「まったく。ひどい彼氏ね」


 
きっと忙しいんだ。

 
うん、きっとそうだ。

 
気にしない、気にしない。


 
カエルの頭を撫でながら黙っていると。



「吉沢さんっ! 早坂さんっ! なにしてるの? もう時間すぎてるわよっ!」


 
店長の雪乃さんが更衣室に入ってきて。



「「す、すみませんっ」」


 
私と麻紀は、急いで更衣室をあとにした。


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