個人的事情につき“お触り”厳禁

そんなわけで、本日の掃除当番は私。

さっきまで打ち合わせで使っていた会議室を掃除している。





窓ガラスはもちろん、桟も拭いた。

使ったボードの裏も磨いた。

入口のドアは二度拭きした。

課長のチェックは厳しくて、昔の鬼姑のようなことをやってくれる。

指先でツツッと埃チェックしてフッと吹く、みたいな。

それで何度やり直しをさせられたことか。

…なんて。

思い出し笑いをしそうになったとき。

会議室に誰かが入ってきた。





「あれ、終わっちゃった?」





入ってきたのは同じ課の中村くん。

彼もまた課長の姑根性に泣かされているひとりだ。





「うん、終わったよ」

「会議室広いから手伝おうと思ったんだけど、俺、用なし?」

「アハハ、ありがとー」

「…あ、ちょっと待って」





中村くんはおどけたように笑いながらも。

何かに気付いたようにこっちに手を伸ばした。




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