あなたのために。-光と影-
風間さんが運転する車の中で、何も考えずにただボーッと外を見ていた。
車は綺麗に磨かれていて、後部座席の窓は外から見えないようにスモークが貼られている。
黒すぎて警察に止められるんじゃないかってくらい黒い。
風間さんが自慢してきたこの窓や車体は防弾らしい。
「…いやーしかし、若奥様は若にすごく愛されてますね」
愛されてる?私が?奴に?
さっきの光景を見たらそう見えるのかもしれない。
でも少なくとも私は奴を愛してない。
しかもこの人はさっきから…
「あの、さっきから私のこと若奥様って呼んでますけど、それやめてもらっていいですか?
あの人の正妻と名乗ってるだけなんで」
「え!そうなんですか!?」
風間さんは急に大声を出して驚いた。
こっちからすると何故風間さんが驚いてるのかが分からない。
だって紛れもない事実を言っただけ。
「…じゃあ、まだ若の一方通行なのか…」
ボソッと風間さんの独り言が聞こえた。
まだ?
確かに奴は私のことを4年も前から目をつけていたと言っていたけど…
「まだ」って言うことは、そのことを風間さんは知ってたってことだよね。
「風間さんは蓮条楓が私を…その…好きだということを知ってたんですか?」
奴が私のことが好きというのが自意識過剰な発言のようで、言いづらかった。