大好きなんです
はぁ……ずっと無視されるのは俺が堪える。
仕方ない……
俺は萌の手をとって近くの空き教室に入った。
き、霧谷くん!?と言う萌の声が聞こえるが無視。
教室に入りかちゃり、と後ろ手で鍵をかける。
萌は疑問をその目に浮かべて俺を見ていたが、俺と目が合うと慌てて俺に背を向けた。
ちらりと見えた顔が赤かったから、多分まだ恥ずかしがってるんだろうな。
「もーえ」
ぎゅっと後ろから萌を抱き締める。
ふわりと甘い香りが鼻をかすめた。
「き、霧谷くん!?早くしないと授業始まっちゃう……」
「大丈夫だろ」
抱き締める力を強くすると萌がぴくりと体を揺らした。
「萌、怒ってるの?」
「な、何に……?」
「あの絵のこと」
耳元でそう言うとカアァ、と萌は頬を染めた。
「べ、つに……怒ってるとかじゃなくて…その……」
モゴモゴといい淀んでいたが、萌は小さく口を開いた。
「は、恥ずかしくて………だって、あんな、は、はだ、か…みたいな絵………」
語尾は小さ過ぎて、微かに俺の耳元に届く程度だった。
やっぱり、恥ずかしがってたか。
そんな萌に自然と頬が弛む。
「綺麗だった」
「え?」
「あの絵、俺はどれも綺麗だと思ったけど」
「ひゃ………」
ちゅっと耳元にキスを落とす。
「本当に、天使みたいだったしな」
そしてもう一度キスを落とした。
「き、りやくん……くすぐったいよ…」
「あと一回だけ」
俺はうなじにキスを落とし、小さく印を付けた。
「んっ……な、何したの?」
「特には何も?行こう、授業遅れる」
「あ、待ってよ霧谷くん!」
自然と俺の隣に並んで歩く萌を見て、少し笑みがこぼれる。
「萌、教室戻ったら相田に聞いてみな。ここのこと」
さっき付けたキスマークをなぞるように俺は指を滑らせる。
「分かった?」
「う、うん…分かったよ?」
俺はぽんぽんと萌の頭を撫でてから先に教室に入った。
萌にはもっと自覚してもらわないとな。
キスマークのことを知った萌の反応が楽しみだ。
Fin.