大好きなんです
結局あたしが反対する前に二人はこの服を買ってしまって……
明日はこれを着ないといけない運命に。
「こんな服着ていって、霧谷くん、がっかり…とかしないかな……?」
服自体はすごくかわいいと思うけど、あたしは普段こういうの着ないし……
ぎゅっと服の入った袋を抱きしめる。
「何言ってるの。あたしが選んだ服よ?
霧谷も喜ぶこと間違いなしよ」
「そーそ。心配しなくても大丈夫だって」
「ゆっちゃん…峰くん……」
不安で重かった心が少し軽くなる。
「ほら、次はケーキの材料買いに行くんでしょ」
「あ、そうだった」
服のことで頭いっぱいだったよ。
「じゃあ俺はこれで。明日頑張ってね、桃ちゃん」
「うん。ありがとう、峰くん」
ひらひらと手を振って離れていく峰くん。
「……ゆっちゃん、行ってきたら?」
「え?な、なんでよ」
「あたし、峰くんに洋服のお礼言うの忘れちゃってたから、ゆっちゃん代わりに行ってきて」
「え、で、でも……」
「あたしここで待ってるね!」
躊躇うゆっちゃんの背中を峰くんの行った方へ押す。
ゆっちゃんはそんなあたしを見て少し困惑しながら峰くんの後を追った。
ゆっちゃんも素直になればいいのに。
多分、ゆっちゃんは峰くんが好きだと思う。
いつからか分からないけど、ゆっちゃんと峰くんはお互い呼び捨てになってて、それをゆっちゃんに聞いたら真っ赤な顔で「特別な意味なんてない!!」って言ってたから。
あんなゆっちゃんの顔、初めて見たなぁ。
いつもあたしばかり相談にのってもらってるから、今度はあたしがゆっちゃんの相談にのってあげたいな。
「ごめん、萌」
「ゆっちゃん。お礼言えた?」
「い、言ったわよ」
うん?あれ?
「ゆっちゃん、顔赤い?」
「っ、赤くない!」
「あ!ま、待ってよぉ」
ぷいっ、と横を向いて進んでいくゆっちゃん。
そんなゆっちゃんをかわいいな、と思ったのはあたしの秘密。