蜜は甘いとは限らない。【完】




「何してるの」

「……。」

「山中!!」




ガツンっ



な、に………?



さっきまで目の前に居たはずの山中は居なくて、自分の足だけが目に映る。


そのことに理解できないでいれば、体が不自然な形で浮いた。




「行きますよ、お嬢様」




どうやら後ろに山中以外にも嵐川の“犬”は居たらしく、あたしはそれに何か物で殴られたみたいだ。



ヌルリ、額を拭えば白のニットが赤で濡れた。



そんなあたしの顔を覗きこんで山中は言った。







「 貴方は、ずっと嵐川の人間で居てもらわなければ、ならないのですよ 」







そう、狐のような目を更に細めて笑った山中に苛立ちを抱きながらも、遠くなっていく意識に身を委ねた。




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