蜜は甘いとは限らない。【完】




「どうして?
あぁ、今ここに残ったことですか?」

「えぇ、あなたたちはあたしが代理社長をすることに、反対じゃないの?」

「もちろんです。
多少の心配はありますが、あの人と違う方針で進めてくれるのであれば、喜んで付いて行きますよ」

「不満、だったの?」




“嵐川様”そう呼ばずにあの人と呼んだ筒美さんに、聞く。

まぁ、あたしだったらあんな社長。
嫌だけど。





「不満も何も、相談事は全て聞いてくださらないので。
そうですね、不満と言うより、呆れました」




あんなので、社長なのかと。




「…そう、ね。

言っちゃ悪いけど、あたしはつい最近までOLだったの。
だからそこまでこの世界がわかってる訳じゃないけど、OLのように、下から見た世界観であたしは変えていきたい」

「と、言いますと?」

「こんな、格差社会でなくてもっと皆の意見が通る会社がいいわ。

大きさじゃない、結局は社内環境で変わるのよ」




ここの世界は、狭い。
もっと周りを見て、自分の視界を広くすることから始めないと。


…元居た、あたしの会社もそうだったけど。
あの部署の中だけは、暖かかった。




「…舞弥様、いえ、社長。
あなたになら、この会社を変えれる気がする。

私たちにもぜひ頼ってください」

「ありがとう」




お力添えが出来れば私達も嬉しいです。


ありがとうと言ったあたしに笑顔を作る。

そんな、自分で作ったような笑顔でなくて自然に出た笑顔にあたしも顔が綻ぶ。



……明日から一ヶ月。





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