無口な上司の甘い罠
「深山君、三十路過ぎたおばさんをからかわないの」

そう言って深山の肩を叩くと横を通り過ぎた。

…それなのに、懲りずに深山は私に付いてくる。


…なんだか、子犬のような奴だ。

そう思ってしまって、少し笑えた。


「あ、坂口さんが笑った」

「・・・」

イチイチ私の行動を、実況生中継され、

その言葉に、周りはえらく興味津々だ。

…私は見世物じゃないっての。


「さっさと仕事しなさいよ、深山君」

溜息交じりにそう言うと、


「わかってますよ・・・あ。これだけ、言わせてください。

今夜、時間下さいね」


「・・・は?」

勝手に予約され、深山は自分のデスクに戻っていった。

…なんだって言うのよ。



「お前、深山に惚れられたな」

「・・・んなわけないじゃない」

隆盛に言われ、更に溜息をつく。
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