その手を離さない

「んーー私も誰かにそうして欲しかったから、
 ……かな?」

正直に言ってから、あの日の気持ちが甦ってきた。

私も同じ気持ちだったって。

不満と不安でぐちゃぐちゃになりそうだったあの日の私。

一年たった今だって、不満が消えた訳じゃない


「そっか……
 あの日にしてやれなくて、ごめんな」

よしよしって彼の右手に頭を優しく撫でられて、甦った気持ちが幸せな気持ちに上書きされていく。


「ん?今日は髪もいい匂いがする」

さっき手にしたみたいに、彼は髪をクンクンと嗅ぐ。

「そう?」

ハンドクリームと同じメーカーのシャンプーに変えたからかな。

「ヤバ……完全に誘われた」

「え?」

「ごめん環、メシ後にしよう」

「えっ!ちょっと…翔平!」


繋いだ右手をぎゅっと強く引かれて、駐車場へ走る彼に笑いながらついて行く。




たぶんこの手は一生離れない




Fin


< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
琉季菜/著

総文字数/146,653

恋愛(その他)159ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大手企業ASO社長の蓮は両親を飛行機事故で亡くし若くして会社を継いで以来、少し女性不信になっていた。結局は外見やステイタスでしか自分を見てくれないのだと。 ある日仕方なく出席した出版社のパーティで鮮やかなエメラルド色のドレスを着たモデルの一花と出逢った。 彼女の大きな瞳に惹かれ興味をもった蓮は彼女の抱える問題を助けようとする。 エメラルド色の猫の瞳が安らぎと信頼を求める彼女と蓮の絆を確かなものにする 30年前に描かれた四枚の絵。 バラバラになっていたその絵が 引寄せた恋と愛の三部作。 【猫と宝石シリーズ】第二部! 2013.10.31~ ********************* 作品中、緩めですが大人な表現が出てきます。 苦手な方はご注意下さい。
猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
琉季菜/著

総文字数/173,529

恋愛(その他)222ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
両親を飛行機事故で亡くした 麻生兄妹の末っ子 美桜(みおう)は 亡き父の友人東堂の持つ趣味の店 《silver spoon》を経営している。 ある早朝、彼女の前に現れた 低めの甘い声が魅力的な 榊 絢士(さかきあやと)は 売り物でない絵に描かれた猫と 同じ猫の絵を持っていると言った。 サファイアブルーの猫の瞳が 二人の運命的な出会いを確実なものにする。 30年前に描かれた四枚の絵。 バラバラになっていたその絵が 引寄せた恋と愛の三部作。 【猫と宝石シリーズ】第一部! 2013.6.15~2013.10.30 2024.4 改訂  ******************* 作品中、大人な表現が出てきます。 苦手な方はご注意下さい。
regret
琉季菜/著

総文字数/26,283

恋愛(純愛)37ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
短編【アナタガスキ】のりょうくんこと、 曽根崎凌介(そねざきりょうすけ) のその後の話です。 凌を中心に、 りかとりょうの二人を取り巻く人達による オムニバス形式で『過去』と『現在』の話が 展開しています。 ―※attention※― ただ今こちらは限定公開中です。 2014.8.28~

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop