演劇部の記憶
振り返り演劇
野球場の3塁の守備にわたしはついた。中学の野球部の顧問からノックを受けている。次の瞬間、横から飛んできたボールが耳に直撃する。『ピーン』と耳鳴りがする。誰がボールを投げたのかと横を見た瞬間、また耳鳴りらしき音が耳の中で響いた。

部屋に鳴り響くチャイムの音でわたしは夢から覚めた。ああ、夢だったのか。
わたしは、ベッド周りがいつもと違うと一瞬思いながらも、すぐ大学の演劇サークルの発表会でホテルに来ていると思いだした。そしてわたしは風邪をこじらせ、ホテルで寝込んでいるんだということを思い出さざるを得なかった。今頃、サークルの他のメンバーは開会式にのぞんでいるころか。
 もう一度チャイムが鳴った。だるい体でドアを開けると、サークルのメンバーの弘だった。
「先輩、風邪の具合どうですか?」
「まだ、だるいし。ちょっとよくない……」
「ああ、そうですか。夕ごはん食べてないだろうと思って、コンビニで月見うどん買ってきましたんで置いときますね。それと、先輩の分の開会式で配られたパンフレットです。じゃあ、僕たち下の会議室を練習場所として開けてもらっているんで、失礼します。先輩もよくなったら顔見せてくださいね」
 弘が部屋から帰った後、女子大生が一人、すっぴんでパジャマ姿で寝ている部屋に男子がのこのこ入ってくるのも弘だから焦ることではないかと思った。だってこんなことはもう何度かあったから。
わたしは、そんなことを考えながら、弘が持ってきたパンフレットを手に取った。
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