死にたがりの少女をさらった愛することを忘れた狐

体に残る自傷の痕

これらは無理やり生かされている証

死ねると思ったから飛び降りたのに

死ねなかったのは神様の気まぐれなんだろう

後日聞いた話では、飛び降りた下はごみ置き場で、ごみがクッションになってくれたそう

それでも全身打撲で2週間は入院をしないとならない

今だけはあの忌々しい毎日を忘れられるだろうか


そんなある日

「いづみちゃん、これ。」

手渡されたのは千羽鶴

「クラスの子が届けてくれたのよ」

「・・・っ」

鋭い痛みが走る

良く見ると、紙の所々にカッターの刃が仕込んであった

「ふふ、学校に通うのが楽しみね」

「・・・・そう、ですね」

泣きそうになるのを堪える

今だけは忘れられると思ったのに

何で・・・

どうして・・・


ぼやける視界で手書きのメッセージを読む

『日直代わっておくからね☆』
『がんばって元気になって!』
『寂しいから早く来て~』
『夏休みは一緒に旅行いこうね』
『いつまでも待ってるよ』

その言葉には何の感情も感じられない

ふと、何気なくそのメッセージの頭文字を縦に読んでみる



【ニガサナイ】

背筋が凍った

私はもうこの狭い鳥かごから逃げられない

それを改めて認識した

それはもう生きることを諦めざるおえない

そう悟った夕暮れだった。
< 13 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop